自分が実際に使っているプラグインの中でも、自信を持っておすすめできるものをピックアップしてみた。
毎度のことだけど俺はエンジニアではなく作家なので、選ぶ方向性が若干違うかも知れない。でも元々はエンジニアのオススメが後の自分の定番となっているのは確か。だから理には適ってると思う。
いつも言ってるとおり、少ない手数で大きな効果を得ることが前提。つまりは時短ができる製品こそ、俺にとってのジャスティス。
「プラグイン」はDTMで音楽制作する際、必要不可欠なエフェクター群のことだね。
定番には定番の理由がある
ほとんどの人はサイトや動画のレビューからプラグインを選ぶことが多いと思う。実際、俺も数え切れないほどのプラグインを買って試行錯誤している。そしてある程度試していくうちに、自分のお気に入りを見つけたら他は淘汰される傾向があることに気づいた。
プラグインにも色んなジャンルがあって、それぞれのジャンルにそれぞれの定番が存在する。たくさんのユーザーに使われた結果、十分な品質と満足を返してくれた信用の証。迷ったら定番を選んでおけば間違いない。
意外に思うかも知れないが、必ずしも「新しい=良い」にならないのがこの世界の常。新しいプラグインは星の数ほど発売されては埋もれていく。生き残るのはやっぱり定番。
自分の定番テンプレートを作れ!
大切なのは、まずはひとつのプラグインを使い倒してクセや特徴を把握すること。それが出来るまで乗り換えない。EQはこれ、コンプはこれ、ディレイはこれ、といった具合に自分の定番を作る。
決めたら原則それ以外は使わないこと。それは自分の中のものさし(基準)をつくるため。
新製品が出るたびに乗り換えていると習熟度が上がらない。結果、使いこなせないままずっと能力が育たない。お金と時間だけ湯水のように消費する沼パターン。
新しい機能やUIに慣れるまでの時間が無駄。そんな事してる間にもう一曲作れてしまう。EQひとつを変えたところで曲のクオリティが上がったりはしない。投資したものに夢を見たいのは分かるけど目を覚まそう。
但し、そのプラグインでしか得ることが出来ない、固有の効果を持つ製品ならアリ。例えばPultec系やNeve系のEQなど。でも「どうしても」じゃなければわざわざ使う必要はない。
現代のDAWに付属しているプラグインは優秀なので、とりあえずそれを極めるのもアリ。関係ないけど「FL STUDIO」を使う人は何故か付属のプラグインをめちゃ使い込む。性能は優秀なんだけどUIがイケてない。かなり使いづらくて俺は封印している。つまりはそういうこと。
プラグインは「どれを使うか」ではなく「どう使うか」がポイント。
EQ(イコライザー)
1.RENAISSANCE EQ (Waves)
定番中の定番。レジェンド・オブ・レジェンド。古いという意見もあるけど、それはこのUIのせいだと思う。性能は今でも一線級。
極端に狭めたQが欲しいとかでなければ、これで十分。これでどうにもならないなら素材が悪すぎるか強すぎるかの問題。特定の倍音をピンポイントで突くみたいな作業なら、後に紹介するPro-Q3に軍配が上がる。でも我々が作るのは音楽であって、音響実験をしているワケではない。
欠点という程でもないのだけど、最近の高性能なEQにはスペアナが標準で付いてくるので、それを含めてもUIが寂しいのは事実。でも気兼ねなく全トラックにバシバシ挿せる安心感は何者にも代えがたい。
2.Pro-Q3 (FabFilter)
無敵。キング・オブ・キング。もはや現代の最強定番かもしれない。
やりたいことはこれひとつでだいたい済んでしまう。
ダイナミックEQ・リニアフェイズEQ・M/S・サラウンド・高性能スペアナ、他のトラックとのマスキング解析・・・ ひと括りにするには高性能過ぎる。
EQポイントは好きなだけ作れるし、カーブも豊富すぎて迷う。そう、できることが多すぎて迷ってしまう。少なくとも各トラックに挿すEQなら、これである必要はない。
むしろ外科的な用途やマスターに挿すことでめっちゃ輝く。(スペアナ的な意味でも)
3.KRAMER HLS CHANNEL (Waves) &
4.API550 (Waves)
この辺りは自分の好み。色付け用のプラグイン。
通すだけでアナログ感がプラスされるので、シンセ系のトラックには最初に必ず挿す。気まぐれで他のも試す事はあるけど俺の定番はこれ。ソースやジャンルに合わせてチョイス。
APIはカラッとした今風な明るい音になる。HLSはモッチリッチになる。ただ、HLSは使いにくすぎる。UIが最悪。ザックリと音決めする専用。
5.NLS (Waves)【番外編】
これもよく使う。EQとは違うのだけど、通すだけで音が超リッチになる。アナログ卓のインプットセクションをエミュレートしたものなんだけど本当にそれっぽい音がする。まろやかで太くて艷やか。めっちゃお金をかけたような音になる(笑)
Compressor(コンプレッサー)
6.RENAISSANCE COMPRESSOR (Waves)
普通にコンプ挿すならこれ。UIが世界一分かりやすい。真ん中のリダクションメーターが見やすいから初心者も効き具合を把握しやすいと思う。音質はクセがなくて素直。操作にリニアに反応するから狙った効果が得やすい。
7.CLA-76 (Waves)
UNIVERSAL AUDIO 1176のエミュレーション。定番というか鉄板。アタックが速くてドラムやギター、ピアノなどに使うと「パコーン!」と前に出てくる。非常に効きが分かりやすい。
8.VSC-2 (Vertigo Sound)
バスに挿すならこれ。何にでも使える万能かつコンプを感じさせない高性能コンプ。
サチュレーションで明るく、パンチ感もグッと出てくる今っぽい質感。サイドチェインフィルターで低域だけをトリガーからスルーさせる事ができるので、ポンピングなしでドラムバスのパンチ感を出せる。コンプ1種縛りするならこれ。
9.PUIGCHILD COMPRESSOR (Waves)
真空管コンプ。このルックスはいろんなスタジオの写真などで見ると思う。フェアチャイルド670のレプリカ。リズムなどのアタック感というよりは、音のカタマリ感が欲しい時に使う。インプットを上げていくとサチュレーションが効いてくる。すごく良く纏まる。
10.KRAMER PIE COMPRESSOR (Waves)
これはドラムバスに挿すといい感じにヌケてパンチが出る。グルーヴが強調されて良き。
11.Vitalizer MK2-T (SPL)
昔はよく使った。これはバス向けというか、2Mixの補正などに使うコンプ?だと思う。EQとしても使えるし、ステレオエンハンサーとしても役に立つ万能選手。アルトベンリ。
Reverb・Delay(リバーブ・ディレイ)
12.RENAISSANCE REVERB (Waves)
俺の場合、リバーブはコレのプリセットを使うことが多い。微調整は初期反射とリバーブのバランスでいい感じに調整。リバーブバスは低域と高域をカットしてからコンプで均して、リバーブをWet100%で掛ける。だいたいはボーカル以外で2系統のバスを用意する。SmallRoom系とHall系。
13.Pro-R (FabFilter)
最近はこれもよく使う。EQやコンプを通さなくてもコレ単体で音作りが出来る。というかトラックにそのまま挿したりもする。ボーカルやリード系のトラックに使いやすい。
14.H-DELAY (Waves)
今現在、ディレイはこれしか使わなくなった。パラメーターが分かりやすくてコントロールしやすい。モジュレーションが付いてるのでLFOで揺らぎを加えることも出来る。LoFiモードやフィルターが付いてるので質感を作りやすい。もう万能すぎて不満がない。だから他を探さなくなった。
Saturation(サチュレーション)
15.MANNY MARROQUIN DISTORTION (Waves) &
16.APHEX VINTAGE AURAL EXCITER (Waves)
俺の場合アナログEQやコンプで質感を作るので、わざわざサチュレーション単体で使うことは少ない。
元から暗いソースなどでハイを持ち上げたい場合、俺はEQを使うよりもサチュレーションで艶を足す。EQでハイを持ち上げるよりも自然で痛くなく心地よい倍音が付加される。API550のハイブーストはニュアンスとしてはサチュに近いと俺は思ってる。やりすぎるとノイズ感が強くなって逆にヌケが悪くなるので注意。
17.Saturn2 (FabFilter)
これはキックやベースを歪ませるのに使う。上と用途を別けてる意味はないのだけど、俺は前述の使い方で慣れてるので自然とこうなった。Saturn2は出来ることが多くて、極めれば全ての歪はこれひとつで賄えるのだろうけど。俺はまだ研究が浅いので勿体ないけど低音専用プラグインになってる(苦笑)
Lofi・Bitcrash(ローファイ・ビットクラッシュ)
18.Vinyl (iZotope)
ローファイ感ならコレひとつで結構いける。古いレコードの音を再現するプラグインなんだけど、これがメチャ優秀。挿して年代を選ぶだけでそれっぽいレコード感(笑)もちろんバイナルノイズを消したり足したりも自由。これ確か無料配布だった気がするので、チェックしておくといい。
19.Krush (tritik)
ローファイ+ビットクラッシャー。ロービットデジタルのノイズを演出することが出来る。破壊系とも言うかな。昔はGlitchとかよく使ったな。
テープ・エミュレーション
20.Virtual Tape Machines VTM (Slate Digital)
テープ・エミュレーターは通すと独特の倍音が足されるうえ、角が取れて丸いサウンドになる。ハイファイ感は薄くなるけどパンチが出る。俺は好き。
カセットテープ世代最後の人類なので、テープを通した音に安心感を覚える。昔はレベル調整してギリギリまでレベルを突っ込んで録音することに命をかけていた。子供だからCD買うお金がないので新曲はFMラジオから録音してた。失敗すると歪む、イチかバチかの一発録り。おっと話が逸れた。
とにかくあの独特の質感を得るにはこれを通すのが手っ取り早い。テープ系はWavesにもあるけどSlate Digitalが秀逸すぎる。めっちゃパンチが出る。シンセとか薄くなりがちな音色はコレを通せば例外なくリッチで太い音になる。オススメ。
その他・番外編
21.CHRIS LORD-ALGE SIGNATURE SERIES (Waves)
CLAシリーズはどれも使える。Wavesのシグネチャーシリーズはいくつかあるけど、CLAは使いやすくて簡単に音が派手になるのでオススメ。特に「CLA Vocal」「CLA Guitar」はお世話になってます。
デメリットは細かいパラメーター調整が難しいので、あくまでザックリと音決めするのに使う。意外と融通がきかない。Chris Lord-Algeおじさんは主にロック系のグラミー・エンジニアなのでジャンル的にそっちが向いてるかな。
22.TONY MASERATI SIGNATURE SERIES (Waves)
こっちもめちゃ使いやすくて音がいいのでオススメ。CLAでハマらないときはこっちを試す。
23.OneKnob Series (Waves)
やっぱり推す(笑)究極の時短ツール。ひょっとしたらこのバンドルだけでミックス出来てしまうんじゃないかとさえ思う。
俺はDriverをよく使う。挿してパラメーターを0~0.3の範囲で質感をコントロールする。たぶん内部的にコンプとサチュが働いてるんだろうけど、いい感じの塩梅でトラックに馴染ませてくれる。0.4~0.9でかなりLoFiな質感になるけど、ハイが切れてしまうワケではなくいい感じに丸くなる。1.0~でかなり暗くなって潰れ具合もキツくなる。でもギラギラしたシンセとかに合わせるといい感じにファットになるので、実はEDMやDubstepなど音数が多い曲でめちゃ活躍する。今後はDrive以外も積極的に使ってみようと思う。
24.Soundtoys 5
飛び道具系な印象が強いSoundtoysだけど、クオリティはかなり高いのでメインで使える。マンネリした時や気分を変えたい時はこっちを使ってみたりする。Effect Rackが便利で、プリセットでめちゃ遊べる。
25.VMR Virtual Mix Rack (Slate Digital)
これも気分転換で試してみたい時に使う。内容はWavesと被るんだけどUIが違うから新鮮に感じる(笑)効き方も違うんだろうけど比較したことはないので分からない。ラックの中のプラグインをマウスで動かすのがめちゃ楽しい。UXは大事だと思った。
まとめ
以上、俺がオススメするプラグインをざっと紹介してみた。共通して言えることは、とにかくシンプル。直感的に操作出来るので迷わない。この「迷わない」が重要なポイント。音のクオリティに関しても、文句のつけようがないぐらい優秀なものばかり。
プラグインの相場は昔に比べれば非常に安くなった。とはいえ、気軽にホイホイ買えるようなお値段でもない。でも時間に投資すると考えれば決して高くはないはず。音が決まらなくて作業が止まったり、モチベーションが維持できなくなったりすることを考えれば、このぐらいで済むなら安いとさえ思う。損はしないはずだ。
ところで、書いてみて思ったけどこれはジャンル分けしないと網羅するのは難しいな。例えばVocalに使うプラグインの括りじゃないとLA-2Aが出てこない。S1も抜けてるしリミッターもあるな。また別の機会に紹介しよう。
今日はここまで!おつかれさま~