「自白」を全話見た感想(韓国ドラマ)

「自白」

自分は映画やドラマのレビューは好きじゃない・・・というか苦手なので、まさかそれを書こうなんて思ったこともない。

見た後の気持ちや感情をいちいち言葉にするのは野暮だと思うクチなので、なんか微妙な気持ちではあるけれど。

とにかく「自白」だ。韓国ドラマ。普段まったくと言っていいほどテレビを見ないし、韓ドラなんか興味ない俺がどうしてこんなことになったのか。

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冒頭15分で察したクオリティの高さ

上であんなこと言ってるが、実は毎週楽しみで仕方なかった。これを書いているのは8月28日、LaLa TVで自白の最終回を見終わった後。1ヶ月間、毎週4話ずつ。全16話を欠かさず見た俺のレビューを書いてみる。

ことの発端は1ヶ月前の土曜日、昼前に起きて朝飯を食べていた時に家族が出かけた。その時テレビは付けっぱで、俺は冴えない頭のままボーッとテレビを眺めていた。

まさにLaLaTVで自白の第1話が始まったところだった。まったく興味がない俺は「韓ドラなんて恋愛モノか歴史モノしかない」と思ってたので「へーこんなのもあるんだ」と思いながら何か食べてた。

和製ドラマの気恥ずかしさがダメ

恥ずかしい

はじめの印象というか俺の勝手な思い込みなんだけど、どうせ最近の和製ドラマ・映画の劣化版みたいなもんだろうと思いながら見てた。最近の日本の作品を知らないのだけど。

日本のドラマはマンガ文化の影響か、誰も求めてないのにメタ的な演出が入る印象で見てられない。気恥ずかしさで冷めてしまう。

キムタクみたいな斜に構えた主人公のわざとらしい演技がもう痛い。さらにシリアスならシリアスを貫いてほしいのに要らぬユーモアをわざわざ挿むのが激痛。イケメンのおちゃめな一面を見せたら視聴者が喜ぶと思ってるのがもう鈍痛。

こういった場面に出てくる固有名詞が「キムタク」な時点で俺も痛い。グサグサ刺さる。

自白もどうせそんな感じだろうと思いながら見ていた。

良い作品は視聴者を現実に引き戻させない

しかし自白は一貫して緊張感の演出が秀逸。見ている間「くだらねぇ」とか「それはない」どころかトイレも空腹も考える隙がない。冒頭の15分ほどでこのドラマが「ながら観」の対象にならないことは理解した。

というか俺は1話が終わるまでこれが連続ドラマだということに気付かなかった。てっきり映画だと思いながら見ていた。「2時間ほどなら観てやろう」と構えていたので、1話が終わった時点で「え!?」だった。

それぐらい映像のクオリティが高い。構図もそうだけど質感がフィルム的なのだ。和製ドラマのような妙なチープさがない。今の韓ドラってこんなだったのかと正直驚いた。

最終話のラスト近くで1箇所だけ、やたらソフトフォーカスなシーンがある。そのシーンは女優を美しく見せるシーンなんだけど、あそこだけ「あー日本のドラマっぽいな」と思った。和製ドラマは俳優を美しく見せることに注力しすぎ。だから嘘っぽい。

このドラマ、最初のうちは気のせいだと思っていたのだけど、女優さんの化粧ノリの悪さやシワの映り込みなど、まったく隠そうとしていないのが終始気になっていた。ポートレート的な美しさよりも、よりリアルに見える構図・角度が多用されている。正直、これ女優さん的にOKしていいの?と思うシーンもあった。

というよりも主演のジュノだけが常に別格の美しさを保っているところがちょっと笑える。髪がいっさい乱れたりしないんだもん(笑)

海外ドラマあるある

「これドラマなのかよ!何話あるんだ?」とググったところからもうすでに沼にハマっている。この感覚、身に覚えがある。俺も昔にドラマを見まくっていた時期があった。ひょっとしたら読者の方にも思い当たる人がいるかもしれない。

00年代海外ドラマブームの火付け役、そう「24-TWENTY FOUR」だ。あのときと同じ感覚だこれ。

「しまった、ハマるやつや・・・」気づいた時には遅かった。

丁寧に構築されたシナリオ

自白1

緊張感だけでは長時間も見ていられない。自白の何がすごいってやっぱりシナリオだ。こういうサスペンス系のストーリーって使い古されて手垢まみれな印象なんだけど、切り口を変えるだけでまだまだイケると気付かされた。

小さなストーリーがいくつも展開され、それぞれに伏線が張り巡らされている。微妙な距離感で付かず離れずに展開していき、やがて点と点がつながって線になる的なアレだ。

しかも「時間」という概念がシナリオの展開に大きなトリックを持たせてあって「アレがコレに?」「コレがアレに繋がってる?」「あの時のアレがまさか!?」の連続。もうこれだけでおもしろい。つまり出てくる人物や物にはすべてしっかりと意味が与えられている。

序盤のあらすじ(ネタバレなし)

ジュノ

物語の主人公は若き新米弁護士。彼は幼い頃から心臓の病に伏していたのだけど臓器移植を受け病を克服し、それから弁護士を志す。彼が弁護士になった理由は5年前に死刑囚にされた父親を救いたい一心から。

そんな彼がとある事件の弁護を担当することになった。現場に残された指紋から容疑者は自白するのだけど、裁判当日になって無罪を主張しはじめた。新人でありながらも有能な彼は、この容疑者を無罪放免に導く。

しかし容疑者の犯行を確信していた熱血刑事が「いとも簡単に凶悪犯を無罪にしてくれたな」と彼に警告し、自身は判決の責任を取る形で辞職する。

それから5年後、再び同様の事件が発生し容疑者は再逮捕される。今回の弁護も再び彼に指名が飛んできた。辞職した元刑事が「今回の事件にヤツは関与していない」と弁護士の彼に言い寄る。「法廷で証言してやる。その代わり5年前の事件の罪をヤツに償わせろ」と迫る。

「一事不再理の原則」によって、一度言い渡された判決を再び裁くことは出来ない。

つまり容疑者が今、5年前の犯行を認めたとしても、すでに無罪判決が言い渡された罪を刑に処すことはできない。それに加えて今回の事件の関与も証言によりクリアされる。即ちすべての刑から免れることになる。

裁判所としても「一事不再理」という法律はあるものの、過去に一度として適用された事例はない。それに一度下した判決を翻すことは法の番人としてのプライドが許さない。

証言台に立つ容疑者に対して5年前、自身が導いた無罪判決を否定するかのように弁護士自ら「再度聞きます。被告人は5年前、罪を犯しましたか」と詰め寄る、前代未聞の公判。その行方やいかに。

観たほうがいい

この壮大な話を文字に起こすのは無理。読んでも分からないだろうし何も伝わらない。序盤の要点だけ掬ってみたけど、この他にもたくさんの伏線や人間関係が交錯する非常に重厚なストーリーだ。

やや難しそうな印象を受けるかもしれないが心配無用。難しい用語も複雑な展開も、物語中でちゃんと説いてくれるので置いてけぼりにはならない。俺が付いていけるからたぶん大丈夫。

途中、カット割りやシーンに違和感を感じるところが無いとは言わないが、それにしてもよくできてる。素直にオススメできるし、むしろ観なきゃ損だと思う。

そんなことより5年後の被害者女性が華原朋美かと思ったんだがどうでもいい。

美味しいものをおいしいと言えるしあわせ

俺は物事や作品を色眼鏡で見ないように心がけているので、お国や人種などに寄らず良いものは良いと言う。(冒頭の和製ドラマへのツッコミは何)

作品の価値とその問題は別の話だ。世の中には色んな人が居るので、韓ドラというワードで拒否反応を示す人もいるけど正直勿体ないと思う。

俺は自白を観て、すくなくとも今の韓ドラのクオリティの高さに驚いた。もちろんすべてがこんな高次元でバランスしているわけがないだろうからハズレもあるだろう。

でも日本に住んでいながらテレビを見ない俺が「これおもしれー!」と思ってしまった事実に、日本のテレビは気付いたほうがいいと思う。いや、気付かなきゃいけない。

いま、すべて見終わった後にあらためてもう一度観たい。物語が頭に入った上で見ると色んな気づきがあるはず。この作品はそんな設計だ。普段の俺は1回観たらもういいやと思ってしまうタチなので、そんな俺がもう1回観たいと思うのだから間違いなくおもしろい。

とにかく騙されたと思って観てみて「自白」損はさせない。

 

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