ザ・サーペント(The Serpent)スリルとサスペンスに飢えているならオススメの一品【あらすじ・感想】

The Serpent


Netflix独占配信ドラマ「ザ・サーペント」

あちらこちらで評判で、とにかくおもしろいから見ろ!ということなので前情報は全く知らないまま見てみることにした。そしたらこれが見事にハマってしまったので紹介したい。オススメの作品。

約60分 × 8話構成。

毒蛇のように狡猾な殺人鬼を捕まえることはできるのか?

これは詐欺師で殺人鬼のシャルル・ソブラジ (ゴールデングローブ賞候補タハール・ラヒム) と彼を裁くために繰り広げられた執念の追跡捜査を描いた、実話に基づく物語。

目次

どんなドラマ?


このドラマは実話に基づく、タイ・バンコクが舞台のバックパッカーを狙った残虐な連続殺人鬼の話。特にこれから海外旅行に行く予定の人は一度見ておいた方がいい。旅行先で被害に会いたくなければ自衛の意識を高めるしかない。というかこれを見たら否応にも意識せざるを得ない。

舞台は1970年代のバンコク。映像的に発展途上のタイの雰囲気をよく捉えていて、没入してしまうとこれが2021年の作品だということを忘れてしまう。町並みや自動車、人物の服装まで徹底的に70年代が再現されているが、一方でそこまで古臭さを感じさせない映像美が堪能できる。ある意味オシャレ。

物語のキーはこの2人

この物語は主に「追う側・追われる側」二者の主人公視点で語られ、劇中の時系列も進んだり戻ったりと忙しい。ボーッと見ている余裕はない。常に緊張の連続。

シャルル・ソブラジ

シャルル・ソブラジ

追われる側の殺人鬼「シャルル・ソブラジ」は宝石ディーラーの顔を持つ男。巧妙な手口で観光客を誘い、毒を盛りパスポートや金品を奪ったあとは殺害し、証拠隠滅まで完璧にこなす。奪ったパスポートで身分を偽装し高飛びする。頭脳明晰、眉目秀麗で70年代イケメンといえば、こういう横分けヘアーが似合うヤツのことを言うのだろう。肌の色を除いては。

ヘルマン・クニッペンバーグ

ヘルマン・クニッペンバーグ

対して追う側の「ヘルマン・クニッペンバーグ」はバンコクのオランダ大使館で下級外交官として働く、謹厳実直で融通の効かないクソ真面目公務員。はっきり言って何のメリットもないのに家族や身内を引きずり回してグチャグチャにしながらも、凶悪事件の真相を探ることだけにすべてを捧げる正義漢。自身は警察でもなんでもない。

しかし彼が居なかったら「シャルル」の悪事は取り沙汰されるどころか、誰もしらないまま闇に葬られていたのも事実。

 

シャルルの手口

シャルル・ソブラジ(本人)


どこからどう見てもサイコパス。人の心を掴むのが上手く、巧みな話術で誘導する。あまり多くを語らないが、人情と男気に溢れたシャルルの誘いは誰も断ることが出来ない。しかしそれを逆手に取り、容赦なく他人を貶める手口はあまりにも残忍。

とりあえずクスリ。とにかくクスリ。このドラマは漫画やアニメのように何度も飲み物に薬物を溶かすアイキャッチが出てくる。やり方としては卑怯極まりないが、信用さえ得てしまえば単純かつシンプルに相手の行動を封じることができる。クスリでラリラリにしてしまえば逃げることも抵抗することも出来ない。読者の皆さんは旅路で口にするものは絶対に気をつけた方がいい。下痢ピーになっても紙つきのトイレがある保証はないぞ。

現金を持っていなければ大丈夫?そんなことはない。シャルルはトラベラーズ・チェックさえ換金してしまう。そう、パスポートの偽造ぐらいお手のもの。アジトの金庫には被害者のパスポートをありったけ蓄えている。それはもちろん偽造して被害者とすり替わるため。ということはすなわち、被害者を生きたまま放す訳にはいかない。生きたまま海に沈めたりガソリンを撒いて火を付けたりと残忍。

証拠を残さず身分を偽って飛び回るシャルルに目をつけたのが外交官「ヘルマン・クニッペンバーグ」だが、シャレにならない不器用さで見ていてイライラする。教科書どおりにしか行動できないし、ヒーローアニメの見過ぎなのか妙な正義感が行動の源となっていて、シャルルも大概だがクニッペンバーグも対極に位置するサイコ野郎なんじゃないかと思うレベル。ある意味それが愛嬌とも取れなくはないのだが。というか外交官ポジションに就く前に運転免許ぐらい取っておけ。

シャルルの人物像

シャルル&マリー

シャルル・ソブラジ

もちろん実在する人物である。誤解を恐れずに言うなら、今世間で問われている「親ガチャでハズレを引いた組」は言い過ぎか。ベトナム籍の母親の連れ子でフランス軍中尉の父親を持つが、血筋はインド人父親のもの。兄弟の中でも父親の血を引かないシャルルは次第にネグレクトされ、鬱屈した少年期を過ごした。

肌の色が濃い彼は家の外でも差別され、この段階で彼の人格形成に並々ならぬ影響を与えたであろう「血のコンプレックス」に異様なほどの執着を持つ。彼の異様な行動は、ある意味防ぎようがないというか起こるべくして起こったというか・・・

シャルル&マリー(本人)
シャルル・ソブラジ(本人)

関係ないがザ・サーペントを見終わった後にシャルル本人(現実)の写真を見てみたら割と似ていてびっくりした。と思ったら、シャルル役のタハール・ラヒムの素顔が別人すぎてこれまたびっくりした。役作りすごいな。

70年代アジアのローファイ感

ヘルマン・アンジェラ 夫妻

劇中の行動がいちいち時代を感じさせるところに演出のニクさを感じる。没入してしまうと本当にこのドラマが2021年の作品だということを忘れてしまう。登場人物全員が常にタバコを吹かしている。ついでにいうと一部はタバコですらない。葉っぱやら色々くわえている。視聴者にタバコをやめた人がいたら、なんかこう、モヤっとするかもしれない。俺にも1本くれ。

劇中、被害者に多いパターンとして、愛と自由を求めて旅をするバックパッカー、ヒッピーなどが挙げられる。タイ・バンコクといえばバックパッカーがこぞって集まる聖地。そう言えば劇中の被害者のひとりは僧院に入信して尼になるという人物も居た。あと、お国柄か新聞の一面に死体の写真がデカデカと載っているのはどうなんだ。はっきり言ってグロ画像。今では考えられない。(バンコク・ポスト)

時代の空気感の描写が秀逸

ナディーン

現代生活に慣れきってしまった身としては「なんでそこですぐ連絡しないの」とかイラッとするんだけど、それもそうだ。当時は携帯電話なんてなかったし、メールすらない。平成生まれ以降だと見たこともないかもしれないダイヤル式電話機やFAX、ラジオやブラウン管テレビなどレトロ・ガジェットがいちいちオシャレ。

単に古い映画で当時の生活様式が出てきてもあまりピンとこないのだけど、このドラマはさすが最新の映像だけあって、レトロのフィーチャーの仕方が上手い。熟れている。簡素で無骨なアパートなども、その雰囲気を醸し出す要因かもしれない。

物語の展開につれ、場所もタイから香港、インド、パリ、ネパールと移り変わっていくが時代考証がしっかりしていて、その時代のその場所がしっかり描かれている。と言っても基本はクローズドな環境で起こる物語なので、合間合間の休憩みたいな感じだけど。

まとめ

シャルル・ソブラジ

物語の終盤は「え?」の連続で、良い意味でも悪い意味でもまあ裏切ってくれる。しかしシャルルの考えている事が本当に最後まで分からない。ラストまでの過程を振り返っても、あれだけ計算高いのにこんなことでやらかす?と思ってしまうのだけど、結局サイコの考えることは理解できなくて当然・・・最終的に訪れた場所も「なぜ?」としか思えない。頭が良すぎると一周回って馬鹿になるのか。

とにかく「ザ・サーペント」はぜひ見てもらいたいドラマ。全8話というボリュームは適当だし、がんばれば一気見できるのでスリルを味わいたいならオススメ。

ちなみに「シャルル・ソブラジ」は目に余る残虐非道な連続殺人をおかしておきながら、終身刑として現在も服役中である。

キャスト・スタッフ

【キャスト】

  • シャルル・ソブラジ / タハール・ラヒム
  • マリー・アンドレ・ルクレール / ジェナ・コールマン
  • ヘルマン・クニッペンバーグ / ビリー・ハウル
  • アンジェラ・クニッペンバーグ / エリー・バンバー
  • アジェイ・チョウドゥリー / アメシュ・エディレウィーラ
  • ポール・シーモンズ / ティム・マキナニー

【スタッフ】

  • 監督:トム・シャンクランド、ハンス・ヘルボッツ
  • 脚本:リチャード・ワーロウ、トビー・フィンリー
  • プロデューサー:スティーヴン・スモールウッド
  • 製作総指揮:リチャード・ワーロウ、トム・シャンクランド、プリーシ・マバハリ (マンモス・スクリーン)、ダミアン・ティマー (マンモス・スクリーン)
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